湖面で自由に動き回れるフローター。僕らの必須アイテムだ。
真夏の陽の下でフローターを膨らますのは、すっかり中年に
なってだいぶ緩んだ体には堪えるけれど、視線を限りなく水面
に落としてライズを待つ至福の時間は何にも代え難い。
当然のようにそんな時間の中の鱒達との出会いは、普段のそれ
とは異なるものにもなり得る。
目指すポイントへただひたすら背面漕ぎで進む。
時にアゲインストの最中に渡る時などにはふくらはぎが攣らない
訳がない。 攣ったことを周囲の仲間に悟られぬように納まるのを
待つ有様は、釣られた鱒が必死に水中でもがく様と似ていると思う。
目指すポイントへ向かう最中にルースニングで図らずも掛けた鱒が
大きかったり抵抗したりすることもある。
あんなにおっきな自然の中で思いがけずも拾った幸運は、意外と自
分の胸の中にだけ仕舞っておきたい大切な想い出となってくれる。
あの日もまた大切な想い出に出逢えていた。
あんなにも綺麗な鱒達に出逢える期待で胸昂ぶらせて、僕はまたきっとまた峠を越えてしまう。